神戸大学交響楽団90周年記念演奏を振って
中 島 良 能(S38B:Vc指揮)
ワーグナー:ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕への前奏曲
この度光栄にも神戸大学の現役、OB合同オケを指揮する機会を頂きました。
私は歴史の半分にあたる45年前の在学中に神戸大学交響楽団の指揮者を務め、
それを契機として得た音楽の知識と感覚をベースに現在音楽家としての活動を行なっています。
このような蓄積をもとに再び音楽の素晴らしさを共有できた事は感慨深いものでした。
今回100人を越すオケ編成にあたり裏方は大変であったと思います。
まずこの事について当会幹事に感謝致します。又現役諸君は力仕事に加えて、
演奏面では先輩に上席を譲り、不足パートを補充する役割を担いオケを成立させてくれました。
今回OBが楽しめたのは学生諸君のお陰です。厚く御礼を申しあげます。
さて指揮者としてのコメントを下記のとおり申し述べます。
- オケは多くの人の集合により達成できる高度な喜びであり、
そのためには当日だけでなく練習して演奏すべきである事、
その練習日はOBにも参加できる時間帯で事前に連絡されること、
必要なら東京でも分奏との提案をしました。
これらは真面目な学生諸君との共演の第1条件と考えたからです。
幸いその多くを実現して頂きました。
- 現役諸君は丁度4年生が抜けたあとの3年生以下で、
基礎能力は高いが無垢な状態で率直に言えば表現力はまだこれからだと感じました。
しかしこれを音楽にするのは指揮者の役割で、実際に練習を重ねる度に良くなってきました。
新入生が入り新4年生が経験を積めば年末には素晴らしいオケになるでしょう。
- OBについては、まず練習にフル参加してくれた鳥丸氏夫妻(昭42卒)に
コンマスとチェロの頭に座って頂き、演奏の核となってもらいました。
前述の学生オケの情況からこれは大きかったと思います。
又当日多くのOBが参加されたので最初は心配しましたが、
皆各地のオケで活躍中の現役と見え大きな戦力となってくれました。
- 指揮者の音楽的要求はオケのプレーヤーはどこでも皆聞いてくれますが、
その中には心から納得してくれたものと、そうでないものがあります。
指揮者とオケの関係は双方向のコミュニケーションであり、
音楽を通じてなされる心の交流でもあります。
最初は戸惑いもありましたが、最終的には良い交流がえられ参加者の満足につながったと思います。
- 演奏には、弾きやすいテンポや強音の迫力だけでなく、遅いテンポでのリズムの確保や魅力的な弱音の響き、
音色の変化といった内容の深さが重要ですが、残念ながら今回は無理でした。
しかし10年前大学オケ最優秀校となった際、池袋で聴いた神大オケはそのレベルに達していました。
やる以上は目標は高く持つべきでしょう。
- 世代を超えて簡単に一つになれるのは音楽の持つ大きな力です。
国を超えても同じで、海外公演の度にいつもそれを感じます。
響友会の活性化と結束は音楽を通して行なうべきで又それしかないでしょう。次の機会を期待しています。